「リスニングができない」と言ってもその症状はさまざまです。症状によって推測される原因やそれによって出す処方箋も変わってきます。
リスニングができない!!何言ってるか全然わからんしできるようになる気がしない・・・もうやりたくない(パサッ)
力になれるかも。何ができなくて何が難しい?
それも全くわからない!!
ここでの問題は本人がその症状が何かを伝えられず、処方箋が出せないことです。何となくリスニングの勉強を続けても、自分のどこが悪いからリスニングができないのか、そもそも「リスニングができる」と言う状態がどのようなものなのかもわからず、徐々にモチベーションを維持するのも難しくなっていくでしょう。
一方で、見受けられる症状を分析し、想定される原因に合った対処をすればリスニング力は改善されていきます。リスニングができる人は自分と何が違うのか、ちゃんと原因を把握した上で弱点を強化する対策に取り組むことが重要です。
本記事では「リスニングの何がどうできないか」を細分化し、それぞれの原因とリスニング強化トレーニングについてまとめています。
リスニングができない3つのパターン
まず「リスニングができない」をもう少し詳しく教えてください。多くは以下の3タイプのどれかに当てはまるかと思います。
- 英語が全く聞き取れない
- 聞き取れる単語はあるけど英文の意味がわからない
- どのリスニング問題も途中から理解が追いつかなくなる
複数該当することもあるはずです。また英文のレベルによって、1.だったり、2.だったりすることもあるでしょう。
1. 英語が全く聞き取れない
英語が全く聞き取れないというのは、英語を英語として捉えられずほぼ雑音に聞こえる、単語の一つもわからないという状態です。
このケースは、まず英語に触れる時間が圧倒的に少ないことが根本にあるのですが、具体的に何が欠落しているのかというと以下の2つが考えられます。
(1) 単語の意味を知らない
英語に限らず日本語でもそうですが、知らない単語は聞こえません。日本語でも会話の中で自分が知らない単語が稀に出てくると何度聞き返してもわからず、やっと音がわかっても「なにそれ?どういう意味?」ってことありませんか?
私たちは「聞いて瞬時に意味を想像できる音」でないと「意味のある音」として正しく聞き取れないんです。
ドラえもんの「ほんやくコンニャク」を一発で聞き取れる子供は「翻訳」が何かを理解しているということですね。何か知らんけど食べたら会話できるようになるって雰囲気でわかってるだけです。
(2) 英語の音を知らない
単語の意味やスペルを知っていても、音としてどう聞こえるのかを知らなければ、その単語が発音されても認識できません。
リスニング問題で何度聞いても聞き取れなかったのに、解答のスクリプトを見たら知っている単語ばかり…という方は、それら「英語の音」を知らないのが原因です。
バぃコンナエッ?
Sorry?(ハイ?)
バッコンナンえっ?(デカめの声)
(わからないけど)Yes…
受け取ったサンドを見て初めてその謎のフレーズが「Bacon & Egg」だったことが判明(/・ω・)/
普通は多少聞こえづらくても絶対聞き返さくても想像できる単語ですね。このときBacon & Eggの「音」を知ったことで、以降は瞬時に理解できました。
このように音を知ってるか知らないかで連想できるものが全然違います。
2. 聞き取れる単語はあるけど英文の意味がわからない
口語なので「Yes・No」や「Hello」など一語で完結することもありますが、それらをを除いて、リスニングでは複数の単語が次々と流れてきます。単語はそこそこ聞き取れるのに文章の意味がわからない部分があるという場合は、以下のような知識不足が考えられます。
(3) 単語を組み合わせた慣用表現(イディオム)を知らない
たとえば以下のような単語の組み合わせ。すぐに意味がわかりますか?日本語で言語化できなくてもすぐイメージが湧きますか?
- I’m on my way.
- give it a shot
- state-of-the-art
簡単な単語ばかりですが、一語ずつ直訳を当てはめても意味が通らなさそうです。模範解答は下記の通り。
I’m on my way | 今、向かってます。 |
(Just) give it a shot ! | (とにかく)やってみよう! |
state-of-the-art(facility) | 最先端の(施設) |
これらのイディオムを聞いて瞬時に意味を想像できなければ、雑音として聞こえてしまいます。
(4) 英語の構文(型・パターン)や文法を覚えていない
英文をただの単語の羅列として捉えるのでなく、意味の通る文章として理解するには「文法知識」が必要です。テキストとして読んで理解できない英文は、音声で聞いてもやはり理解できません。
リーディングとは違って立ち止まって考えたり思い出したりする時間がないため、音声が流れた時に必要な文法事項をすぐに引き出せるレベルの定着が求められます。
3. どのリスニング問題も途中から理解が追いつかなくなる
単語もイディオムも聞き取れて、最初はいい調子なのに徐々にスピードに追いつけなくなって聞き取れなくなってしまう。これは、聞こえた英語を前から聞こえてきたままに理解する英文処理速度が遅いことが原因です。
(5) リスニング音声よりも読解スピードが遅い
英文処理速度とはリーディングでいう読解スピードを指します。読解スピードとは、返り読みや飛ばし読みをせずに英文の内容を一度で理解しきる最大のスピードです。情報をテキストから得るか音で捉えるかの違いで、自分の読解スピードより速い音声は理解が追いつきません。
どのリスニング問題も最初の1~2文しか意味がわからず、あとは聞き流すだけということが起こります。1文目を理解し終えてないまま話し手は2文目3文目…と進んでいき、だんだん遅れをとって途中から全く追いつけなくなるというわけです。
つまり、リスニングにおいて「じっくり何度も読めばわかる」ではダメで、「音声よりも速いスピードでスクリプトを読み、一度で内容をすべて理解しきる」ことが求められます。
1. 「英語が全く聞き取れない」を克服する
英語が全く聞き取れないというケースにおいては、英語を聞いたり読んだりする経験が圧倒的に足りていません。言い換えれば、まだ聞き取れるようになってないだけなので、コツコツと知っている語彙(意味と音)を増やしていきましょう。
手元のリスニング教材のスクリプトを読んでみて、「半分以上が知らない単語」という場合は、選んでいる教材が難しすぎるかもしれません。
語彙力を鍛える
単語を知らなかったことが原因で聞き取れなかったなら、シンプルに覚えてしまえば解決です。知らない単語があるのは全然悪いことじゃないので、自分の知ってる単語を増やしていきましょう。
一度見たり聞いたりしただけで新しい単語を覚えることはほぼ不可能なので、無理に覚えようとしなくても大丈夫です。むしろ忘れることを前提に毎日同じ音声を聞くなどしていると、自然と記憶に定着していきます。
英語特有の音声現象を理解する
英語の音は単語ごとの発音だけでなく、文全体の強弱やリズムによって変化します。同じ英文でも話し手にとって重要な部分が「強く、ゆっくり、そしてハッキリと」発音され、またそうでない部分は「弱く、速く」発音されます。
この時に音の「連結」「脱落」「消失」などの音声現象の変化が発生し、これに耳がついていけないと聞き取れません。
またスピーキングにおいても典型的なジャパニーズイングリッシュと言われるものは、この音声変化の要素が欠落しています。あくまでイメージですが、たとえば以下のように発音されます。
- “I got to go to work” は「アガラゴるワー」
- “What do you want to do?” は「ぅワドゥヤワナドゥー」
- “A lot of people” は「あロろヴピープゥ」
カワイイ先生による音声変化の解説動画
https://www.youtube.com/watch?v=3tM_aaH-Z08わかりやすい。英語→日本語で解説してくれます。これも知ってるか知らないかで聞こえ方が全然違ってきます。
自分で発音できるように練習する
まずは自分の聞き取れるようになりたい教材のリピーティング(コンマや話し手の息継ぎごとに音声を止めて、直前部分を声に出して繰り返す練習)から始めてみてください。
発音できない音は聞き取れませんので発音やリズム、イントネーションをできる限り正確に再現するように声に出して練習します。自分の声を録音してみるとできているかどうか確認できます。
また教材はナチュラルスピードが収録されているものを選んだ方がいいです。ゆっくり音声では音の連結や消失が発生しないことがあり、自然な音声変化が学びにくいためです。
2.「英文の意味がわからない」を克服する
知っている単語が聞こえてくるのに、その並びや組み合わせ方から意味のある英文として捉えられないケースでは、慣用表現(イディオム)や文法知識に抜け漏れがあることが原因です。慣用表現(イディオム)は、単語と同じように、知っているか知らないかだけの話なので、その都度「新しい表現に出会えた」くらいの感覚で語彙力を高めていきましょう。
問題はリスニングのための英文法です。ここでの英文法は、英文を読み聞きするために必要な文法をいつでも引き出しせるように“身に付ける”ことであり、正しい文法用語などは覚える必要はありません。まず中学3年間の基本文法を押さえておけば、ほとんどの英文は(単語さえ知っていれば)理解できます。
TOEICなどのリスニング試験では、ニッチな文法知識を問う設問が紛れていたりしますが、そういった場合は「公式問題集」に出てくる例文を繰り返し見聞きすることで、使われ方が感覚的に身についてくるはずです。たまに出てくる難解な英文法よりも、まず日常的に頻繁に使われる基本文法を身につけてスコアを安定させましょう。
総合英文法書として定番の『Forest』や『ロイヤル英文法』は情報量がかなり多く、「まずは基本を押さえたい場合」や「今すぐのリスニング対策」には向いていませんが、文法事項が網羅されている辞書として手元に置いておくといいと思います。(中学や高校で指定されるもので大丈夫です。)
3.「途中から理解が追いつかない」を克服する
教材のスクリプトを用意して一度だけ黙読してみてください。収録音声よりも速く読み終わり、かつ一度で理解できますか?
自分の読解スピードよりも速い英語音声はだんだん理解が追いつかなくなります。しかしこれは言い換えると、「読解スピードを強化することで、速い音声も聞き取れるようになる」ということです。
次は以下の方法で同じスクリプトを読んでみましょう。途中で知らない単語が出てきても立ち止まらず、大枠を捉えることを心がけてみてください。
- 時間を計ってとにかく速く読む。
- わからない単語や文法があっても最後まで読み通す。
- 大枠の内容が理解できなかった場合はもう1回最初から読み直す。
※内容を前から語順通りに理解していくように読み、飛ばし読みや返り読みは一切禁止。
※3回読み通しても大枠がわからない場合は、単語や文法を調べる。
読解スピードを上げるトレーニング法については下記記事を参考にしてみてください。(TOEIC向きですがトレーニング手法は同じです。)
リスニングができない症状から原因を探り、適した対処法を実践しましょう
英語が聞き取れない原因をまとめます。
- 知らない単語は聞き取れない
- 知ってる単語でもその音を知らないと聞き取れない
- 発音できない音は聞き取れない
- 自分の読解スピードより速い音声は理解が追いつかない
まずは症状を具体化し、原因を探ってみてください。優先度をつけて対処を実践していけば、改善が自分でも実感できると思います ٩( ‘ω’ )و
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