当ブログでは、ちょいちょいアルクの語学教材を紹介してはベタ褒めしているのですが、久々にTOEIC関連で良書を見つけたのでご紹介させてください。
こちら『TOEIC L&R 基本例文990選』でっす
Audibleのおすすめで流れてきて聞き流してみたら「あるある」ばっかりの濃厚コンテンツで、リスニング対策本として「こういう使い勝手がいい教材欲しかったなー」ってなったんで、強くオススメしておきます。
内容は、タイトルの通り「TOEICテストでよく見聞きする英文を990本収録しました」というものです。TOEIC特化の単語帳やパート別の問題集、模試は選べないほど教材が出てますが、例文集ってのは珍しいですね。
TOEIC公式問題集を数冊集めてギュッとした反復練習本
本書『TOEIC L&R 基本例文990選』を一言で表すとそんな感じです。
最も信頼度の高いTOEIC模試本と言えば『公式問題集』でして、これを新しい順に虱潰しでやっつけてくのも良い対策だと思うんですけど、これ何冊も買うってなるとお財布が悲鳴を上げるんですよね。
一方で、アルク認定のTOEIC講師63人が執筆・監修を行った『TOEIC L&R 基本例文990選』には、公式問題集の半分くらいのお値段で、本試験5回分(公式問題集の2.5倍)の例文が収録されております。ちなみに音声だけならアルクの「ダウンロードセンター」、もしくは「booco(アプリ)」で無料で入手可能です。
さて、こういう「よく出る系の参考書」では、単語やイディオム、問題のパターンを出題頻度順に紹介していくんですが、本書では、そういう語彙や表現から、トピック、よくあるストーリー展開まで、あらゆる要素をすべて例文に落とし込んでる感じですかね。
収録例文
- パート別例文700本
- Part 1 [写真描写問題]:例文1~70(70本)
- Part 2 [応答問題]:例文71~200(130本)
- Part 3 [会話問題]:例文201~300(100本)
- Part 4 [説明文問題]:例文301~400(100本)
- Part 5 [短文穴埋め問題]:例文401~530(130本)
- Part 6 [長文穴埋め問題]:例文531~570(40本)
- Part 7 [読解問題]:例文571~700(130本)
- トピック別例文290本
- 通勤/出勤、会議/プレゼン/交渉、就職/異動/昇進、社内ルール/就業規則、教育/研修
- メディア/エンタメ、広告/宣伝、医療/健康、飲食業/小売業/建設/不動産/観光業、公共施設
似たような展開になるってことは、頻出の単語や表現もパターン化されてるわけでして、ストーリー(文脈)の中で単語やイディオムを覚えていくっていうあまり苦痛を伴わない単語学習ができるのではないかと。
おもしろいのは、正解にしか繋がらない例文のみを収録していること。普通の問題集だとリスニングパートなんかは、復習の時でも全選択肢をいちいち聞かないといけなくて面倒に感じることがありました。(聞いててAが答えってわかったのに、BもCも聞かないといけない。)
Part2の応答問題
When does the next bus leave?(次のバスはいつ出ます?)
- In thirty minutes(30分後です)
- Let me check the time table(時刻表を見てみます)
- Where are you going?(どこに行くつもりです?)
上記すべて正解なんですねー!この正答パターンを普通の問題集で網羅しようとすると3問は必要になっちゃうわけで、単純計算でいくと本書に収録されてる130問で模試15回分相当の学習量を確保できます。
他のパートも同様に、本物だけに触れ続けることで、語法や文法、よくあるストーリー展開を自然に習得しちゃおうっていうコンセプトとなっております。
個人的におすすめしたい本書の使い方
おすすめの活用法は下記の通り。①で例文のストックをコツコツと増やしていきつつ、②③でTOEICあるある(扱われるテーマやよくある話の展開)を掴んで、勘で選んだ問題の正答率も上げましょうみたいな感じです。
- リスニングパートをじっくり着実に詰める(ちゃんと学習時間を確保する)
- トピック別例文の音声を垂れ流す(聞き流しやスキマ時間でもいい)
- 音声講義は息抜きやモチベ維持に活用する
もちろん①から③まで全部本気で取り組んでもらってもいいんですが、スタミナ切れして学習が途切れた時に萎えて戻ってこれなくなったりするんで。②③はノルマにせずに緩~くやっていけばいいと思います。
【パート別例文リスニング】パートの選択と集中で丁寧に回す
リスニングセクションでは、パート1ならパート1だけ、パート3ならパート3だけと、対策する範囲を絞って反復練習を行います。リスニング全般に苦手意識がある場合や試験まで日数があまりない時は、一旦パート2に絞って対策するのがおすすめ。(短期間で大きなスコアの伸びしろが期待できるため)
本書では、「例文を読んで、聞いて、唱えて、覚えて、TOEICの英文処理スピードが上がり、スコアアップに繋がります」とのこと。具体的にはこんな手順で進めていきます。
推奨ステップ(10問ずつ)
- テキストを見ながら音声A(英語→日本語訳)を聞く。
- 解説を読み、単語や文法の不明点をここで解消する。
- テキストを見ずに音声Aを聞く。
- 意味の理解に集中する。
- 音声B(英語→ポーズ)でリピーティング(聞こえた英文を繰り返し発話)
- 聞こえてきた英文を繰り返して発話
- テキストを見ながらでOK
- 発音やリズムを再現できるようになるまで繰り返し練習
- 音声を聞かずにテキストを音読
- 音声Bでリピート&ルックアップ
- テキストを見てもいいが、発話する際にはテキストから目を離す。
- テキストを見ずにリピートできるようになるまで練習
上記を10問ずつ区切って進めつつ、各パートの最後まで行ったらまた最初に戻って復習していきます。2周目以降、1,2は飛ばしてもOK。(ただし不明点があれば、もう一度解説を読むなりして解消しましょう。)
たくさんあるように見えますが(まぁ実際そうなんですが)、2周目、3周目といくうちに発話練習はだんだん回数が減っていくので、パート1(例文70本)だと1日何周もできるようになると思います。
最初は時間がかかる上に疲労感がすごいので無理せずに。特に英語の発音・発話に慣れてない方は、正しく似せて発音しようとするだけで顔とか口元の筋肉がめちゃくちゃ疲れます。(普段、日本語を話す際に使わない筋肉ばかり使うので。)あんまり集中できないなーと思ったら休憩しましょう。
【パート別例文リーディング】個人的には飛ばしていいかも(公式問題集を優先)
リーディングパートにもテーマや展開のパターンがあるのは確かなんですが、本書の形式だとテクニックの習得に目がいっちゃいそうな気がするもんで。個人的には、まとまった文書(連続した文章)の文脈を読み取れるようになることが大事かと。(異論は認めます!!)
あと、「英語を読めるようになりたかったら、段階的にレベルを上げつつ読めるようになるまで読む」しかないと思ってるので、どのみちやらないといけない公式問題集のリーディングパートをスラスラ読めるようになるまで何度も反復してたら、本書に手を付ける余裕がないかもってのもあります。
リーディングパートに音声が付いてるのと、例文音声から単語や表現を覚えられるってのは良いポイント
空所を埋める文法問題や語彙問題も、頭の中に本来のあるべき姿として「完成された文」が入ってれば、正答しか選べないはずっていうコンセプト自体は大賛成で、実際に脳内で起こってる処理プロセスもそうなんですけど、文法的・意味的に正しい文を「自分で完成させる練習」を積めないのが少し心配。
この例文↓の太字部分って多数ある可能性の一つであって、いざ本番で空欄にされた時に「この中で適切なのは…」っていう「選択」がスっとできるかどうかってところ。
言語って、自分で試してみて「通じた・通じなかった・正解してた・何か誤解された」みたいな経験の積み重ねで習得していくので、その表現や文法ルールが身についているかどうかを正誤でチェックできるのが、通常の「問題形式」のいいところではあります。
シャドウイングがスッとできるまでやると確実だけど、それだと負荷が高すぎるのと、やはりリーディング対策としてはちと非効率なんよなぁ。
本人の好みとリソースに寄るところですかね。
【トピック別例文】音声Aの垂れ流しで雰囲気を掴むだけでもOK
最近は「聞き流すだけはダメなんでしょ?」が常識になりつつありますが、ここで推したいのは音声の「日本語訳」です。日本語ならラジオ感覚で聞いてても内容は理解できるはずで、少なくとも展開やトピックは記憶されます。つまり山カン解答に当たりやすくなる!
という狙いで本書では「聞き流しだけでも効果あり!」とされています。
というのも「今からこのテーマの英語音声が流れる」っていう前情報があるのと無いのとでは、聞き取れる単語数や内容理解が全然違いますよね。
Part2では、文頭の疑問詞が何か(Whereなのか、Whoなのか、Whenなのか…)を聞き分けれるかどうかが重要なポイントとなりますが、「文頭に全神経を集中させたのに何て発音したか聞こえなかった」って経験は結構あると思うんですよ。
一瞬だし、ナレーターによってクセ違うし、誰か咳払いするかもしれないし。
でも、あらかじめテーマが「WH疑問文①Who」とわかっていれば、ボーっとしてても「Who」って聞こえてきます。
例文073
___ in charge of ordering office supplies?
もし文頭にザザっと雑音が入って、耳ではこんな感じ(↑)にキャッチしてても、脳内では「Who」が入って再生されてるはずです。
本番では、ここまでピンポイント(次はWho疑問詞だよ~)の前情報が得られることはありませんが、少なくとも「5W1Hの疑問文」が頻出するという前情報でも持ってるか否かで正答率は大きく変わるでしょう。
じゃあ、英語上級者が、TOEICを初見で受けてハイスコアを取れてるのって、やっぱ全部聞き取れてるってことなの?というとそういうわけではないです。むしろ上級者ほど、前情報なるものを持ち合わせています。
こういうときにどう対応するのかというととか英語聞き慣れてますぅって人だと、「こういう話だろうな」「この単語か、あるいはこっちの単語かな?」って引き出しが無数にあるんで、文中の単語を多少聞き逃しても脳内では完成した文が意味とともに再生されるんですね。
上級者の場合
___ in charge of ordering office supplies?
もし、文頭をハッキリ聞き取れなかったとしても、「まぁ”(be) in charge of=を担当する” と来たら、”Who’sin charge of…? = 誰が担当する?”くらいしかないよねぇ」で文頭に”Who’s”が入って正しい文が完成します。
耳ではキャッチできてなくても、他の手がかりをもとに脳内で解析して、”Who’s in charge of ordering office supplies?” と認識できるというわけです。この処理は一瞬なので、本人的には最初から全文聞こえてる感覚かと。
さて、ネイティブや上級者は、無数の「手がかり」を自身の「脳内データベース」から引き出しているわけですが、英語ビギナーが同じようなデータベースを構築しようとしても一朝一夕にはいかないわけですね。
なので、一旦「TOEICテスト」っていうカテゴリに絞ってデータベースを作っちゃおうかーってのが本書の狙いでして、語彙・表現・文法・トピック・出題パターン・ストーリー展開をギュッとまとめてくれてるんですが、展開やトピックなら日本語を聞いてるだけで勝手に頭に入るよねー。だから聞き流しだけでも効果あり!とのこと。
試験本番まで時間がない方も、集中して聞かなくていいのでとりあえず垂れ流しておくと吉◎
【アプリの練習問題】声に出す練習は必須ではあるが、アプリの使用はどっちでも
アプリには、例文10題ずつ音読(自分の声を録音→判定)するモードが付属しています。声に出して練習するってのは確実にやった方がいいですが、アプリは使っても使わなくてもOK。
アプリでやると正誤判定と評価がつき、やった・やってないの記録もできるのですが、音読やリピーティングの練習なんてのは何十回と聞いて口に出してナンボなんで、「この章はもう終わってるからOK」ってもんでもないんすよね。
ま、これは気休め程度でいいかなー。
総評|リスニングはこれ1冊で結構イケそう(TOEIC初心者からOK)
なんせどこを開いても「あー見たことあるわー」っていう英文ばっかなので、例文1本覚えたら1点上がる(まぁスコアは5点刻みになるけど)と言っても過言ではないかと!対策したパートのスコアはやったぶんだけ確実に伸びるので、異論は認めますが、そういうモチベーションで続けられるといいっすね(*’ω’*)
各文に対する解説が短いのである程度の文法力は必要って評価もあり、確かに関係代名詞とかどうしても感覚的な理解が難しい文法事項は、そもそも知識がないと解説を読んでも解説の意味がわからないってのが出てきそうではあります。
ですが、まぁ基礎があるなら大丈夫。特に、短めの英文がテンポよく流れてくるリスニングパートでは、複雑な「文法知識」はあまり使われませんし、それよりも英文を聞いて瞬時に訳や会話の情景が浮かぶような「英文処理スピード」の方が重要になってくるので、それなら本書は持ってこいかなと。
日本語のイメージと合わせて英文ごと覚えちゃえばいいだけなので
てことで、時制とか三単現sとかも知らないってレベルだと難ありかもですが、そうでもない限りは気にせず買っちゃっていいと思います。ガンバッテ(=゚ω゚)ノ