なぜオランダ人の英語は聞き取りやすいのか?を勝手に考察してみた

Xとかでちょいちょい目にするのが「オランダ人の英語ってなんでこんなに聞き取りやすいの?」って話題です。

大半は旅行や出張で一時滞在者ですが、どうもオランダ人の英語は、ネイティブや他国のノンネイティブと比べて言っている内容を理解しやすく、圧倒的に聞き取りやすく感じるとのこと。

まぁそのオランダ人によるよねって話なんですが、一方で「言われてみれば確かにそうかも」と思い当たる節もあるにはあります。

目次

オランダ人の英語が聞き取りやすいわけ「訛り」と「意識」

まず、〇〇人の英語はこう聞こえるとか、〇〇訛り(アクセント)はどうとかっていうのは、ちょいちょい聞く話ですが、どうもオランダ語訛りが英語に反映されるとプラスに作用するようです。

たとえば…

  • インド英語は発音の癖が強い上に早口でずっと集中してないといけない
  • ロマンス系話者は巻き舌が多くてパラパラ聞こえる
  • 日本人の英語は抑揚がなく意図を掴みづらい
  • ブリティッシュ英語はどことなく上品に聞こえる

オランダ語訛りは、クリアな発音やリズムの英語を生み出す

もう一つは、単純にオランダ人が意識的に相手に伝わりやすい英語を話してくれているという点。これは、何人かのオランダ人とコミュニケーションを取ってみると実際にそう感じます。

さらに2年住んでみて感じたのは、コミュニケーションにおいて「言い直しとか通じ合ってない時間は無駄」という合理主義性。互いの認識齟齬を防ぎたいがために言葉を選び、クリアに発音し、スピードを調整します。

合理的かつEasy Goingな人たち👍

あとは、いくら流暢でも彼らにとって英語は外国語であるため、ネイティブなら感情のままに出てくる口癖やスラングを使わなかったり、標準的なアクセントや発音を使用したりという点で、ネイティブであるがゆえに理解が難しくなる要点を排除してるのもありますね。ここは非ネイティブ共通項ですが。

聞き取りやすい英語を生み出すオランダ語の特徴

あくまで英語と比較した際ですが、オランダ語には以下のような特徴が目立ちます。

  • 母音の音に明瞭な違いがある
  • 語尾の子音までしっかりと発音
  • 弱勢音節や機能語を極端に弱化しない
  • 抑揚が少なくフラットなリズム

こういった母語の特徴は、外国語を話す際にも訛り(アクセント)として多少は反映されてしまうものなのですが、オランダ語の場合は逆に聞こえやすい英語を生み出しているようです。

母音の音に明瞭な違いがある

オランダ語には、日本人が苦手とする英語の[ǝ]と[æ]のような変種がほとんどありません*他方で英語では、アメリカでも内陸中部では[ɑː]と[ɔː]の区別がある話者とない話者が混在していたり、内陸北部では一般に[ɑ]とされるところを[æ]と発音したりと、ネイティブの中でも曖昧で統一されていない母音があります。

*英語やフランス語からの借用語やごく一部の方言に含まれることがありますが、一般的に使われる音ではありません。

オランダ語も母音の種類自体は豊富な方ですが、それぞれの母音の長さや音素に明瞭な違いがあります。もちろん第二言語としてオランダ語を学ぶ際には、いくつか発音するのが難しい母音はあるのですが、それでも違いがあることは明確に聞き取れます。

オランダ人が英語を発音しようとする際、母音をシンプルに発音する癖も残っていることが、音の曖昧さを排除したクリアな英語を話すことに繋がっているのかもしれません。

語尾の子音までしっかりと発音

じゃあ子音は?と言いますと…オランダ語は単語間に明瞭な境界があり、語尾の無声音子音までしっかりと発音(文の末尾ではむしろ強調)する傾向にあります。

特に、p, b, t, dあたりの破裂音は英語よりもクリアに発音される傾向があり、たとえば英語は「stop」を「ストっ(唇はpの形だが無音)」と読んだりしますが、オランダ語では「ストっp」としっかりpまで聞こえるように発音します。

また、英語にあるような脱落やフラッピング(ら行化)といった音声変化も起こりません。音声変化は、スペル通りに発音しようとすると口の動きが忙しくなるので、口を省エネモードにしても発音しやすいように音を一部変化させちゃえっていう発音ルールなんですが、オランダ語ではストイックにスペル通りに発音するのが通例*です。

この力強くクリアな子音が英語にも反映されることで、単語の一つひとつが明瞭に聞こえやすくなると考えられます。

*不規則な例として、「ontdekken(発見する)」のように、tとdが連続した場合などはtを省略することがあります。

弱勢音節や機能語を極端に弱化しない

オランダ語には、英語でいう明瞭な「強母音」「弱母音」の分類がありません。単語の音節に強勢(アクセント)を置くことはしますが、それで他の音節の母音が大幅に弱化されることはなく、音の長さや質は比較的安定しています。英語では、弱勢音節で母音をシュワ音[ə]に変化させて曖昧化することが多いですよね。

さらに、英語では「機能語(冠詞や前置詞、接続詞など)」でも母音が弱化する傾向があります。たとえば「of the = アダ」とか「none of = ナナッ」とか、母音を弱くした上で子音も消失させるので、この法則を知らないとマジで聞き取れないという。

個人的にはこれが英語リスニングの最難関課題だと思ってます

が、オランダ語では、そういった機能語も弱めずにハッキリと発音します。なので、この感じでオランダ人が英語を話してくれると、普段は聞き逃してる機能語までよく聞き取れるんでしょうな (´・ω・)

抑揚が少なくフラットなリズム

ここまでの流れでもう結論が見えてそうですが、強弱もリズムもイントネーションも、とにかくオランダ語は均質です。

正確には、強勢のある音節が一定の間隔で出現するため、抑揚が少なく聞こえるよねって話なんですが、これが単語と文構造を理解しやすくしているかと。

オランダ人は超合理主義「不明瞭なコミュニケーションは時間の無駄」

オランダ人の心地よく聞き取りやすい英語は、母語の特性とのマッチングによるところが大きいものの、やはり当人の「うまくマッチさせる意識」があってこそかと思います。自身の発音やアクセントを省みない人や、何回聞き返してもスピードを緩めないネイティブもいるわけなので。

オランダ人は気持ちいいくらいの合理主義でとにかく無駄が嫌いです。その文化はコミュニケーションにも反映されています。

何度も、というか一回でも聞き返すのって時間の無駄だよね。表現やスピードを変えれば伝わるってことは、こっちが「伝わる英語」を話せば一回目から伝わるってことだしワラ。みたいな考え方(をする人が多め)です。

物事をダイレクトに伝えるスタイル

オランダ人は、率直なコミュニケーションを好み、曖昧な婉曲表現を避ける傾向にあります。これはユーモアとは全く別で、意思疎通をスムーズに行えるかどうかという話です。

相手のリテラシー次第で伝わるかどうか決まるなら、そもそも伝える必要ない内容じゃんという。確かに、遠回しにしてまで伝えたいことって何なんだろって考えたら「アート」でなければ「皮肉」くらいしかないですしね。

誤解を生むかもしれないって本人もストレス

伝えたいなら、伝わる言葉を使おうぜってことで、それが英語であっても伝えたい内容をシンプルに直接的な表現を使って話してくれます。

誤解のないコミュニケーションを最優先

そもそもコミュニケーション言語として「英語」を選択しているのも、もっとも相手と話が通じ合いやすい言語であると判断しているに過ぎません。

ちなみに「この件って触れてダイジョブかな?」「これ聞くのって文化的に失礼にならないかな?」みたいな躊躇も時間の無駄でして、バンバン聞いちゃってOKです。

私もオランダに来たばかりの頃は少なからずこういう考えがあったのですが、今となっては「触れていい話題かは本人に聞くしかないし、仮に失礼だよって言われたら学びとして次からはやめとこ~」ぐらいの感覚です。先の先を読んで…みたいなことは一切なくなりました。

このサバサバした人間関係が楽チン

お互いに「伝える・理解する」配慮を忘れずに

てなわけで、オランダ人の英語が聞き取りやすいのは、彼らの母語であるオランダ語の言語的特徴だけでなく、オランダ人の合理的な考え方と相手への配慮に根ざすところが大きいんじゃないかというお話でした。

この理屈でいくと、英語ネイティブであるイギリス人やアメリカ人ももう少し配慮してくれたらなぁ…と思ってしまいそうになりますが、ここでも「そんな期待するより、自分でできることを見つけて工夫した方が確実で現実的」と迷わず乗り越える道を行くのがオランダ流なんでしょう。

よくよく考えても、「相手に伝わりやすい言葉を選び、お互いに理解し合えるような配慮を」って、間違いなくあらゆるコミュニケーションの基本の一つなので、日常から意識を強めていきたいもんです(;´・ω・)

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